全国各地で小児科、産科を中心とした診療科の休止、廃止が相次いでいます。背景には自治体の財政悪化や新たな医師臨床研修制度による医師不足などがあると言われていますが、医療スタッフの集まりやすい病院・地域にするには地域住民の力も欠かせません。地域医療を守るため、患者である住民たちが当事者意識を持って働きかけた、という好例があります。それが2007年に兵庫で発足された「県立柏原病院の小児科を守る会」です。
兵庫県中東部に位置する丹波市。隣接する篠山市を含む丹波地域における基幹病院の1つが兵庫県立柏原病院です。相次ぐ小児科閉鎖と人員削減のあおりを受けた結果、実働小児科医が1人となり、その1人の医師が退職を宣言したことで小児科の存続自体が危ぶまれる事態になりました。その原因の根幹にあったのがコンビニ受診。病院が24時間開いているからという理由で、軽症でも昼夜を問わず病院に駆け込む患者が多かったのです。この病院の場合、17~翌8時までの時間外診療を受けた100人のうち入院の必要があるのはその中の1割。緊急性の高くない患者がひっきりなしに訪れることで医師は疲弊していました。
この状況を打破するべく発足したのが守る会です。患者側が医師の負担を軽減する代わりに、小児科がなくならないよう医師を派遣してほしいという旨の署名を行い、丹波市と篠山市の合計人口の約半数である55,000筆を集めました。その署名は結果として行政には響かなかったのですが、守る会はそこで挫折しませんでした。「コンビニ受診を控えよう」「かかりつけ医を持とう」「お医者さんに感謝の気持ちを伝えよう」の3つをスローガンに掲げ、住民たちへの周知活動にシフトチェンジしていったのです。
そういった活動が功を奏し、夜間診療は激減。月間250~300人もいた小児科の時間外診療は署名開始1ヶ月後に100人、その1ヶ月後には30人弱とどんどん減っていき、平均すると4~5分の1まで改善されました。その分、重篤患者に十分な治療を施せるようになったのです。公的病院の医師不足が続く中でこの病院の小児科に着任を希望する医師も増え、診療体制も整いました。まさに住民たちの力で地域医療を変えたといっていいでしょう。
このような運動が広がるくらい強いパワーを持った人たちが集まっているのが兵庫県の魅力。とはいえ、地域ごとの医師偏在などの問題はまだまだ解決には至っていません。医師を募集している医療機関も多いので、もし転職を考えているのであればこちらのページをチェックしてみてください。→兵庫県の医師転職情報